アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
1891年、トゥールーズ=ロートレックは、馴染みのキャバレー、ムーランルージュの支配人が企画したコンクールで受賞、その4色刷ポスターは彼の評判を高めた。高く足を上げて踊る人気ダンサー、ラ・グリュと、ヴァランタン・レ・デゾーセをシルエットで表現したその作品で、彼は石版に筆で色調に変化をつける「スピッティング技法」を試みている。
続いてロートレックは、ポスター作品「アンバサドゥールのアリスティード・ブリュアン」、「ル・ディヴァン・ジャポネ」を制作。キャバレー・ブリュアンの支配人はその大胆な表現方法にショックを受け、反感を抱いたが、それとは裏腹にロートレックの才能は次第に人々に周知されて行く。
「ル・ディヴァン・ジャポネ」 で見られる画面構成は、正にリトグラフ芸術を象徴していると言える。それは、踊り子ジェーン・アブリルと作家エドゥアルド・デュジャルダン、そして首から下だけを細長いシルエットで表現した黒い手袋の歌手イヴェット・ギルベールの3人を、水平方向を走る色面、単純化されたフォルム、コントラストと明度を輪郭で強調して表現する方法だ。
画家・版画家のベルナール・レミュザ氏はパリのアトリエ "ア・フレール・ド・ピエール" で、ロートレックへのオマージュにオリジナルのリトグラフ作品をプリントする。彼は石版印刷の伝統的職人技術でリトグラフを制作している数少ないアーティストの一人だ。