ピラネージ
古代建築と舞台装置への情熱。ヴェネツィア出身の巨匠ピラネージは、古代ローマを描いた威風堂々たる版画作品でその名を馳せている。1745年、彼は現実に建設する意図は全くない空想の建築物を描いた14枚の版画から成る版画集「空想の牢獄(原題:Invenzioni capricciose di carceri)」を出版、その希有な才能は、石が積み上げられた威圧的な空間の幻影をみごとに描き出した。
1761年の改訂版で色調を暗めに変更され、版2枚幅に拡張されたことで新たな力を得た版画集は、その恐るべき厳粛さを更に増大させた。映画では、新旧二版の比較と、ピラネージの作業過程に光を当てる。
目も眩むようなピラネージの牢獄の世界に共鳴し、ピラネージの崇拝者でもある版画家エリック・デマズィエール氏は二世紀半の時を経て、フランス国立図書館ラブルースト閲覧室の空の書架をエッチングとアクアチントで埋めていく。