現代版画家のアトリエ

クレール･イルーズのアトリエを訪ねるには街を離れる必要がある。しかしそれには閑静な郊外などではなく、むしろ騒然とした地区に足を踏み入れなければならないのだ。穏やかで牧歌的なイメージを与えてくれるわけでは決してない鬱蒼としたこの隠れ家のような場所を彼女が創作活動の拠点にしているのは、とても奇妙に思える。

しかし彼女にとって重要なのは、風が木々を揺らす音や、ぞっとするような無秩序など、自然の中での体験を直ぐさま版と紙に捉え、制作上の課題に直面できる環境だ。カメラを前に、彼女はその挑戦を実践して見せる。

“Of all the Sounds dispatched abroad（世界に向けて送られる全ての音の中で)“ を含む、エミリー・ディキンソンの3つの詩にインスピレーションを受けて制作した版画集で、木の枝は文字通り炸裂し、枠の制約から解放され、電気振動のように交錯する。デリケートで洗練されたドローイングが、作家自によるエネルギッシュな印刷行程で、さらにその美しさを増して行く様子を目の当たりにするのは、版画家のアーティスト･ラン･スペースを体験するかのようだ。

銅版、プレス機、どんどんと黒さを増すインク、強度の高い中国紙が、作家の大胆な手によって次々と作業されていく。そこで木々はねじ曲げられ、人間のように複雑化され、生命が与えられ。静かな画面の中から突然、疾風が立ち上るのが見えるようだ。

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