パリ18区、パブロ・フライスマンのアトリエは「命が脈打つ空間」という表現がぴったりだ。完璧に整理された二つの長細い部屋。その壁に掛けられた様々な顔がこちらを見つめている。男と女、大きなクローズアップの自画像、永遠に続く奇妙な家族の儀式で凍りついたような黒い服の人々、壁際に立ち少女を見つめる大男とその傍らの小さな人影を制するように裏庭の低い塀に腰掛けた人物…。
時には心地よく、時には煩わしい家族に囲まれたこの空間で、作家は光と影を鉛版や銅版に閉じ込める。遠景の濃い影や、窓を背に逆光の中でかくれんぼ遊びでもしながら消えそうなシルエットを、アクアチント技法で巧みに描いていく。彼にとってアクアチントは水彩画と同様、透明性が奏でる „消滅の芸術“ だ。ここでは亡霊が生命を取り戻し、はかない幻影が、フロイトの言う „不安な奇妙さ“ と共に印刷イメージとして物体化されるのだ。